昔話、『花咲爺』。内容の詳細を思い出せない人でもきっと「ここ掘れワンワン」のイメージだけはおありなのではないでしょうか。
軽くおさらいすると以下のようなお話です。
老夫婦の飼っていた白い犬。ある日おじいさんと一緒に山へ向かう途中で「ここ掘れワンワン」と吠えるので、掘ってみるとたくさんの大判小判が出てきます。
この話を聞いた隣のおじいさんが自分もお宝が欲しい一心で犬を貸してもらい無理矢理に山へ連れて行きますが、鳴いた場所を掘ってもガラクタしか出てこず、これに怒った隣のおじいさんは犬を殺して埋めてしまいました。
我が子のように可愛がっていた犬を失った老夫婦は、犬が埋められた場所に松の木を植えて毎日水をやりました。松の木は不思議なことにあっという間に大木になったので、飼い主だったおじいさんはこの木から臼を作って餅つきをしました。すると臼から大判小判が出るようになります。
この話を聞いた隣のおじいさんは無理矢理に臼を借りて餅つきをしますが、臼からはガラクタしか出てこないので、怒って臼を燃やし灰にしてしまいます。
犬の飼い主だったおじいさんは「灰でもいいから」と返してもらい、木に登りました。その時に通りかかったお殿様の目の前でおじいさんは灰を撒き、枯れ木に花を咲かせます。これを見ておおいに喜んだお殿様から、おじいさんはご褒美をもらいました。
これを聞いた隣のおじいさん(マジで懲りない奴…)は無理矢理に灰を奪ってお殿様の前で灰を撒きます。しかし花が咲くことはなく、お殿様の服が灰で汚れてしまい、隣のおじいさんは首をはねられてしまいました。
というお話です。
このお話のどこに五行思想が絡んでいるのでしょうか。
まず「ここ掘れワンワン」ですが、五行思想の『相生(そうしょう)』という『陽』の流れの中において土生金と呼ばれるもので、鉱物や金属は土の中にあり、土を掘ることによってそれを得られる…というものです。
さらに白は五行思想では『金』に対応するため、金を掘り当てるのが『白犬』だったのは必然ということになります。
ただ、これはまだ序の口です。
さらに物語の流れに注目してください。土から金を掘り当てた犬が殺されて埋められ、老夫婦がそこに毎日水をやり、大木を育てて臼を作ったが燃やされて灰にされました。しかしその灰で花が咲いたおかげで殿様からご褒美を貰います。
これは完全に相生の流れですね。土→金→水→木→火→土…
木生火…木が燃えて火を生じる
火生土…モノが燃えて灰が生じ、灰は土に還る
ということなのです。
このような思想の影響を確実に受けている昔話は他にもあります。それはまた後日。